昨日は、本当は「カルマ思想にそれほど捉われる必要はない」という話をしようと思っていたのですが、いつの間にか「カルマ」の説明になってしまい、そこで力尽きてしまいました。今日はおの続きです。いま私は「カルマ思想」と書きましたが、「カルマの法則」と「カルマ思想」とを区別したいんですね。
「カルマの法則」それ自体は絶対的なものですが、そこから規律や規範を引き出して、「だからこうあるべき、こうであらねばならない」とやってしまうと、そこから「カルマ《思想》」になってしまうと思うのです。そうすると、「カルマ思想」にハマることが、また新たな「捉われ」を生んでしまうという気がするのです。
私は仏教から入りましたので、仏教特有の「苦」という発想にすぐにハマりました。生きていることは、とにかく「苦」であると。当時の自分には、その説明がピッタリ来たんですね。なぜ「苦」かと言えば、「苦」が生じる原因を自分が作って来たからだと。これを「因縁」(カルマの別名)と言い、「因縁切り」を目標にして、毎日、行に勤しんでいたわけです。
しかし、今振り返ってみますと、「随分回り道をしちゃったなぁ」と思うのです。「因縁」を「切る」という考え方が、そもそもダメです。これはいつも言っているように「ネガティブ+否定」のワードになっている。ですから、そのことを日夜考えていますと、逆に「因縁」への捉われが強化されて行ってしまうのです。
解りやすい例で言えば、「戦争反対」ではなくて、「平和推進」と言わなければいけないのです。「ポジティブ+肯定」のワードを持つべきだったのです。ということで、「因縁切り」の13年間は、さしたる成果も得られず、混迷を深めただけで終わりました。
文豪ゲーテは(確実にメッセンジャーだった人ですが)、「生きるということは、とにかくいいことだ」と言いました。これは、生きることは「苦」であると考える仏教思想とは、まるで真逆の考えのように思えます。では、どちらかが間違っているのでしょうか? いいえ、どちらも正しいのです。それは、表裏であり、視点の置き方が違っているだけなのです。
ここに、人生に絶望した人がいるとします。明日への光など全く見えません。この人に「生きるということは、とにかくいいことだよ」と言ったところで、通じるものではありません。やはり「今まで、苦しかっただろうね。よく頑張って来たね」と「苦」を認めて、同情を示してあげることが先ずは必要なのです。釈迦の生きた時代、釈迦の周囲には、そのような境遇の人たちが大勢いたのです。
しかし、現代のような時代に、「苦」を強調し過ぎることは、得策とは思えません。なぜかと言いますと、昔とは「苦」の性質が様変わりしてしまったからです。昔の「苦」は、病気や貧困や天災や飢饉や戦争から生じていて、物理的なものを最初の原因としていました。ところが現代人の「苦」は、精神そのものから発しているのです。孤独感や不安感や絶望感が「苦」なのです。
ここに「カルマ思想」を当てはめたらどうなるでしょうか? その「苦」を作り出している原因が自分自身にあると知って、己のいったいどこがいけないのかと、自分を責めるようになってしまうでしょう。あるいは、過去世の自分の行いに因果関係を見出して、いまさら変えられない過去を悔やみ続けるかも知れません。
自己の行いを振り返ってみることはよいことです。しかし反省のし過ぎ、反省しっぱなしはよくありません。それでは、生き抜くバイタリティを阻害してしまいます。「あ、これはよくなかったな」と思ったら、直ちに謝罪するなり、気持ちを切り替えて、改善の方向に踏み出す方がずっとよいのです。そうすることで、失敗体験も活きることになるのです。
このようなことが解ってから、私自身も「カルマ思想」に捉われていたなと、自分を反省しました。このブログでも、少し言い過ぎて来たかもしれません。
「カルマからの脱出」ということを考えますと、先ほども書いたように、「ネガティブ+否定」になってしまいますので、どうしてもそこに捉われが生じてしまいます。そうではなくて、一度カルマを認識したら(つまり因果関係を理解したら)、それをポジティブな考えと行動に置き換えて行けばよいのです。つまり「カルマ」そのものから自由になればいいのです。
そうすれば、ゲーテが言ったように「生きるということは、とにかくいいことだ」ということが、実感として解って行くようになります。それに「カルマ」というと、ネガティブなことばかりだと思っていませんか? そうじゃないんですよ。あなたが磨いた能力や、聡明さや、心の温かさや、親切心や、朗らかさや、ジョークのセンスまで、来世に運ばれるのです。「カルマの法則」によって。
ですから、「カルマ」ということも、あまり重々しく考える必要はないんです。「軽魔」くらいに思っていてちょうどいいのです。これは軽い魔が差したんだと思って、改めればよいのです。それよりも、自分を信じて、元気に、楽しく過ごすことが大切です。しかめっ面をして生きるのも、笑いながら生きるのも、同じ時間を過ごすことなんですから。
-------------------------
明日より、土日祝祭日は、投稿をお休みさせていただきます。ご了承ください。