私が健康体操を毎日するようになったのは、密教ヨーガ(一般に知られているようなハタ・ヨーガではなくて瞑想行)の前段として、体調を整えるための適切な運動法がないかと探していたこともあるのですが、何といっても、体が弱かったからです。
子どもの頃からへなちょこで病弱だったため、なんとか健康になりたいという思いがずっとありました。これが、もし生まれつき頑健な体を持っていたとしたら、「養生」という考えにはとても至らなかったと思います。
スポーツ選手が意外と短命に終わってしまうのは、結局そこではないでしょうか。生まれつき頑健な体を持っていて、体を鍛えるトレーニング法には長けているけれども、「養生」という考えには乏しい。
現役時代はカロリー消費量が多いので、焼肉のドカ食いなどをしても平気だったのが、引退後も食習慣が変えられずにたちまち太ってしまう。それと怪我が絶えず、その後遺症もあって、引退後は急に運動をしなくなる。そんなこんなで、頑健なゆえに不健康ということになってしまうのではないでしょうか。
「養生」というのはトレーニングとは違って、鍛える一方じゃない。最近では科学的トレーニング法が浸透してきて、食事管理や休息も重視されるようになって来てはいますが、「気」を整えるとか、陰陽のバランスを保つといった考えまではないと思います。
今、BS日テレで『宮廷女官チャングムの誓い』の再放送を観ています。話は後半に入り、チャングムが流刑地の済州島に送られ、そこで医女になるための再出発を図るというところです。
ここで、医術の師となるチャンドクに出会うのですが、チャンドクに先ず教えられるのが、患者の顔色を見る技術。顔色を青、赤、黄、白、黒に分け、かつその部位を見ることで、患者の大体の状態を把握する。
次に教えられるのが脈診。これも現在のように単に心拍数を測るというだけではなく、指先の感触だけで脈の打ち方の違いを把握する。芤脈、浮脈、緊脈、滑脈、濡脈、数脈、牢脈、完脈など、その特徴を見分けることで、脈を診るだけで様々な病変を診断するのです。
自分が子どもの頃のお医者さんは、その他にも下瞼をめくって裏を見る、ベロを出させて見る、顔の両側のリンパ節に触れる、指を重ねてトントン打診をする、ということをみんなやっていました。今、そんなことをしているお医者さんは全く見なくなりました。
病院へ行くとすぐに検査に回され、医者は上がってきたデータを見るだけ。現代の医学は、一見発達したように見えて、診断技術は後退した面もあると思います。何よりも、人間を動かしているエネルギーは「気(プラーナ)」にあり、陰陽バランスがいかに大切か、という考えが失われてしまいました。
これが、現代人の不健康を作り、替わって健康食品産業を隆盛させる元になっていると、私は思います。高齢化社会がますます進展するいま、先人たちの知恵に習い、もう一度「養生」の視点に立ち返ることが必要ではないでしょうか。
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