キューブラー・ロス女史の自伝『人生は廻る輪のように』を読んで
2014.05.31 Saturday
友人から、「これ面白いよ」と言われ、エリザベス・キューブラー・ロス女史の自伝『人生は廻る輪のように(The Wheel of Life)』を渡されました。忙しくてしばらく放っておいたのですが、電車の移動時間に読み始めたら、ぐいぐい引き込まれ止まらなくなりました。
エリザベス・キューブラー・ロス女史(1926-2004)と言えば、言わずと知れた『死ぬ瞬間』の著者。この本の上梓は1969年ですが、これはその後のニューエイジ・ムーブメントに多大な影響を与えた、古典的名著の一冊と言っていいでしょう。
なにしろ、それまでは「死」についてまともに研究・考察されたものが何にもなかったのです。同時期、ヴァージニア大学精神科の教授だったイアン・スティーヴンソン博士(1918-2007)が、「生まれ変わり現象」を調査・研究しており、このお二人が学術的な死後世界探求への先駆者となったのでした。
加えてロバート・モンロー博士(1915-1995)が、「体外離脱体験」の研究を行っていたのも偶然とは思えません。それに全員がヴァージニアに関係していることも。この時期に、アメリカで、死後世界への探求が一挙に花開いたのです。注目して欲しいのは、みな精神科医であったり科学者であるということ。
それはアメリカが、プロテスタントが創った宗教国家であったことと無縁ではありません。70年代に花開いたニューエイジ・ムーブメントは、それらに対する、更なるプロテスト(抵抗運動)であったのです。ああ、それに比べて日本は、なんて平和というか、遅れているのでしょうか。
『人生は廻る輪のように』を読んで、ロス女史が、常に闘争心を燃やし続けた人であったことを知りました。おそらくその短気さが、晩年に脳梗塞をもたらしのでしょうけれど、解っていても生き方を改めない、その不屈の闘志には爽やかさまで感じて「自分もこうでなければ」と思わされました。そして何より、ここまでいくと可愛げがある。
「生と死」を考察するワークショップを連続開催しているときの、同僚医師たちの冷ややかな目。「末期患者を食い物にしている」という誤解と偏見。エイズ患者のためのホスピスを創ろうと奔走する彼女に、降り掛かる地元住民の反対運動。さらには家の焼き討ち、銃撃まで。
数々の試練に合いながらも、その度に居を移し、不死鳥のごとく甦っては疾走し続けるエネルギーにはまったくもって感嘆する。それには、溢れんばかりの愛と、そしてちょっぴりの意固地が必要だったんですね。その背後に、一貫して流れている彼女の意思は、明白で本当に力強い。
人はたとえ、どんな境遇にあっても、教訓を得て成長することができる。その機会を無視したり、ましてや取り上げてしまうことがあってはならない。そこに向き合い、援助の手を差し伸べれば、新しい気づきを得て自分も成長できるのだ。そしてそれこそが、無償の愛である。
私はそのように読み解きました。