by Rainbow School
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「おいしゅうございます」で一世を風靡した、岸朝子さんを覚えておられますか? 『料理の鉄人』の審査員をやっておられ、上品な言葉を駆使されていましたね。「料理記者歴ン十年」という紹介になっていましたが、その通り、バリバリ働く女性だったわけです。
以前、その岸朝子さんのエッセイを読んでいたときに、子供と交わした伝言ノートのことが書かれてあって、「なるほどなぁ、これはいいな」と思ったことがありますので、ご紹介します。
なあに面倒なことではありません。普段、食事をするキッチンテーブルの上にノートとペンを置いておくだけ。そして出かける際には、そこに伝言を書きこむのです。作っておいたお惣菜が冷蔵庫のどこそこにあるから温めて食べてくださいとか、お風呂のお掃除お願いしますとか。
私も紙切れにメモを残しておくということはしましたが、それを常設のノートにしたところがミソですね。その伝言を読んだお子さんが、今度は自分が伝えたいことをまたノートに書く。そういうルールにしておく。
すると、伝言のやり取りがそのまま家族の成長の歴史として残るわけですね。岸朝子さんは、こうすることで子供と十分なコミュニケーションが取れたと言っています。
今はたいていのお母さんが外に出て働いていますし、シングルマザーの世帯も増えています。いつも一緒に居ることが、必ずしも親子の愛情じゃないんですよね。一緒に居る時間がそれほどなくても、一冊のノートがそれを果たしてくれる。
重要なことは、気遣いを解る形で示してあげること。子供も、お母さんが自分を養うために一生懸命働いてくれていることは解っていますので、ノートだけで十分通じ合えるんです。それにノートの方が言いにくいことも言えるという利点もあります。育ち盛りのお子さんがいらっしゃる家庭の方、試してみられてはどうでしょうか。
「勇気・根性・潔さ」これは若いころ、ある師から教わった言葉です。その師は、人が仕事をする際に、もっと言えば仕事を通じて生きていく際に、大切なことはこの三要素だと教えてくれたのです。
事を始めるに当たっての「勇気」、一旦始めたら持続する「根性」、そして結果に執着しない「潔さ」。
言葉で言うのは簡単ですが、いざそれを心がけようとすると大変に難しい。
もしこの三つを兼ね備えていたとしたら、その人物は間違いなく大物になっていることでしょう。
三つの中で、「根性」がある人、これは10人に一人くらいは居るでしょう。でも「潔さ」のある人となると、100人に一人くらいしかいない。さらに「勇気」のある人となると、1000人に一人ではないでしょうか?
三つの中では「勇気」を持つことがいちばん難しい。現役時代、私はそのように感じていました。